事業承継マッチングサイトのメリットやリスクは?基本を解説

事業承継マッチングに詳しい男性

事業承継を成功させるには長期的なプランが必要

事業承継は長い時間をかけて取り組むべき問題です。もし自分の親族や従業員に事業を譲ると決めたとして、そこから会社経営のノウハウを教え込み、事業を受け継ぐ準備をさせなくてはなりません。この育成期間は、10年近い長期に及ぶ場合もあるのです。

そんな中、事業を受け継ぐ人や会社を、外部から見つけることができるマッチングサイトが注目されています。今回は事業承継マッチングサイトの特長や、メリットとデメリット、サイト選びのポイントをご紹介します。

そもそも事業承継マッチングサイトとは?

事業承継マッチングサイトは、その名のとおりインターネット上で事業承継を行う両者をマッチングするサービスです。第三者に事業を譲渡したいという経営者と、事業を譲り受けたい会社や個人がそれぞれサイトに登録し、条件の合う相手を探す流れになります。

事業承継マッチングサイトの目的はM&Aの交渉相手を見つけることです。そのため理想的な相手を見つければ、一般的にはそこで秘密保持契約書を交わして社名を明かし、サイトを介さない直接の交渉へと進みます。

事業承継に特化したサイトの他、事業承継に限らずM&A全般を扱っているマッチングサイトもあり、一口に事業承継マッチングサイトといっても種類は様々です。最近の中小規模の会社の後継者不足問題もあり、地方の自治体や商工会議所が運営するサイトもあります。

事業承継マッチングサイトを利用するメリット

事業承継マッチングサイトを利用するメリット

事業承継マッチングサイトは、独自に事業を売買する相手を探すことと、M&A仲介会社を利用することのちょうど間の位置づけになります。相手先候補の選択肢はしっかりと増やしつつ、無用な手間は省き、コストも比較的抑えることができるので、特に中小規模の経営者には有益なサービスです。

サイトに登録すれば自由に相手先候補の情報を閲覧でき、気軽に様々な企業や個人を対象として比較することが可能ですから、事業承継の可能性を広げることができるでしょう。ここでは利用のメリットをより詳しく解説します。

日本全国から売買相手を探せる

マッチングサイトを利用することの最大のメリットは、相手先候補の選択肢が各段に広がるということです。より具体的に言うと、インターネットを用いることで、地理的な縛り無く、日本全国から理想の相手を見つけることが可能です。

特に会社の後継者を探している経営者は、長年自分が心血を注いだ事業ですから、より志高く事業を発展させる能力も備えた人物を選びたいと思うでしょう。他社に売却する場合でも、長い付き合いのある取引先や従業員にとって利益となるような会社を、幅広い選択肢の中から探すことができます。事業承継の成功は、何よりも良い相手と巡り合うことがその第一歩ですから、マッチングサイトはその目的に十分な役割を果たしてくれます。

直接売買相手とコンタクトできる

事業承継に限らずM&Aのファーストコンタクトでは、匿名性が保たれていることが重要です。早期の段階で事業を売却することが周囲に知られてしまうと、取引先や従業員に悪影響を及ぼすリスクがあるからです。そのためM&Aのアドバイザーなどを介して相手先候補とやり取りをするケースもありますが、自分で直接要望を伝えたいという人もいるでしょう。

マッチングサイトでは、社名を伏せたまま気になった相手に直接コンタクトをとり、本格的な交渉までのメッセージのやり取りも行うことができます。お互いの会社の名前や規模も知らないままなので、何でも遠慮なく質問できますし、対等な立場で交渉ができるのが魅力です。

廃業のリスクを回避できる

事業承継にはタイムリミットがあります。現在の経営者が元気なうちに後継者を育成しなくてはなりません。もし自力で後継者を探そうとすれば、思うような相手が見つからないうちに時間だけが過ぎてしまい最終的に廃業しか選択肢が無くなってしまったということもあり得ます。

事業承継マッチングサイトを利用すれば、相手先候補の選択肢が格段に増え、検索もしやすいので短期間で理想的な相手が見つかる可能性が上がります。効率的に後継者を探すことにより、廃業を回避できる可能性も高まるでしょう。もちろん事業承継の成功はその後の育成や引継ぎにもかかってきますが、長年培ってきた技術が失われる、従業員を失業させてしまうといったリスクは大幅に減らすことができます。

専門家に相談しながら事業承継できる

サイトにもよりますが、事業承継マッチングサイトを利用すると、担当のアドバイザーがマッチング支援を行ってくれる場合があります。アドバイザーはM&Aに関する専門的な知識と豊富な経験を有しているので、相手探しだけでなく交渉の段階に入ってからも、有益なアドバイスが期待できます。

ほとんどの経営者にとって事業承継は初めての経験ですから、自分が求める後継者の人物のイメージは持っていても、どのように交渉を進めていけばよいかというのは悩ましい問題でしょう。専門家にサポートしてもらうことで交渉をスムーズに進め、より良い条件での事業承継を叶えることができます。事業承継マッチングサイトにアドバイザーがついているか、どの程度までサポートしてもらえるのか、サイト利用時に確認しておきましょう。

費用を抑えやすい

事業承継マッチングサイトを利用する以外に、M&A仲介会社やアドバイザーに依頼するという方法があります。ですがこれらのサービスでは登録料やシステムの利用料、あるいは高額な成功報酬を払うのが一般的です。サービスによってはリテイナーフィーと呼ばれる、毎月の手数料の支払いが必要な業者もあります。

事業承継マッチングサイトは比較的安価で利用できるのが魅力で、登録料や事業を譲渡する側の成功報酬がかからないというサービスを売りにしているものもあります。特に小規模の企業にとっては、仲介業者に支払う何百万という報酬は大きなコストとしてのしかかってきます。事業承継マッチングサイトでできるだけコストを抑えることができれば、それだけ譲渡する会社の資産を守ることにもなるでしょう。

事業承継マッチングサイトを利用するデメリット

業承継マッチングサイトを利用するデメリット

良いこと尽くめのように見える事業承継マッチングサイトですが、利用の前にはそのデメリットについても理解しておきましょう。よりお手軽なサービスだからこそ、利用する側は様々なリスクを回避するために、慎重に行動する必要があります。登録さえすれば後は良い相手が見つかるだろうと気楽に考えていると、思いがけないトラブルになる可能性もあります。

事業承継は従業員や顧客、さらには取引先全ての今後に関わる重大な問題です。後継者を選ぶにあたって、用心深く主体的にサイトを利用しなくてはなりません。ここでは事業承継マッチングサイトの注意点について解説していきます。

売買相手を選ぶのに時間がかかる

事業承継マッチングサイトは、独自で相手先候補を探すのに比べて、はるかに多くの個人や企業を比較して選ぶことができるサービスです。しかし時としてその選択肢の多さが、かえって利用者を悩ませることになります。サイトによっては数千という相手先候補が登録されている中で、自社の事業承継に適した相手を絞り込むことは至難の業です。

それだけ多くの候補の中から、短期間で無理に選ぼうとすると失敗する可能性もあります。反対に後悔を残さないようにと慎重になって、とことん比較し検討していくと膨大な時間がかかってしまいます。さらには気に入った相手が見つかっても先方がこちらに興味を持ってくれないというパターンも多いので、相思相愛の相手が見つかるまでひたすらサイトをチェックしていなくてはなりません。

情報漏洩のリスクがある

事業承継マッチングサイトはあくまでも匿名での情報を登録するシステムです。ですが、取引先や従業員といった関係者がマッチングサイトを興味本位で検索し、たまたま自社の情報を見て悟られてしまうという可能性もゼロではありません。事業承継マッチングサイトは、登録さえすれば誰でも情報を閲覧できますから、常に情報漏洩のリスクは頭に入れておかなくてはなりません。

もし取引先に事業を譲渡しようとしていることが伝われば、取引に悪影響を及ぼすことは大いにあり得ます。また従業員の間で事業承継に関する勝手な噂が広まれば、不安や疑いを引き起こしかねません。このように情報漏洩は会社経営そのものにもダメージを与えてしまうのです。

経営方針が変わる可能性がある

これは事業承継マッチングサイトの利用に限った話ではありませんが、事業を譲渡するということはそれ以降の経営に大きな変化が起こり得るということです。新しい後継者をよく見極めて選んだつもりでも、実際に会社の経営権を譲った後で、全く意図していなかったような方針を打ち出す可能性もあります。

1つの企業の事業承継は、従業員、顧客、取引先といった全ての人に関わる問題です。新しい経営によって、これらの人達に悪影響を及ぼすことがないよう、譲渡する側は慎重に相手を選ばなくてはなりません。マッチングサイトの利用は、よく知った親族や従業員から後継者を選ぶよりも、こうした人選リスクが高くなるのです。

事業承継マッチングサイトは個人でも利用できる?

現在では多様化するニーズに合わせて、様々なタイプの事業承継マッチングサイトが作られています。多くは中小規模以上の企業向けのサービスですが、中には個人が利用できるものもあります。譲渡する側も個人事業主である場合も多く、個人対個人の比較的小さな規模のM&Aが盛んに行われています。

個人で事業承継マッチングサイトを利用するときは、サイトだけに頼らず、その他の事業承継の仲介サービスを併用することをおすすめします。というのも、事業承継には会計や法務の専門的知識が必要になり、個人だけで全ての手続きをスムーズに進めることは困難だからです。さらに交渉相手が専門家のサポートを受けている場合は、不利な立場に置かれるリスクもあります。交渉段階に入れば、専門家に相談できたり仲介を依頼できるサービスの利用も検討しましょう。

事業承継マッチングサイトを選ぶポイント

事業承継マッチングサイトを選ぶポイント

すでに述べたように、事業承継のマッチングができるサイトは多種多様です。中小規模の企業が後継者不足のために廃業し、日本経済全体に悪影響を及ぼすことを懸念して、政府も各種サービスへの後押しを行っています。そのため市場にマッチングのためのサービスがあふれ、どれを利用すればいいのか悩む経営者も増えています。

人によってサイトを選ぶ基準は様々ですが、特に初めて利用する人が抑えておくべき基本的な事項があります。ここではマッチングのしやすさ、安全性、費用の3つの面から、事業承継マッチングサイトを選ぶポイントについて解説します。

ニーズに合う相手が登録しているか確認する

まずは事業を譲る側と譲り受ける側どちらにとっても、相手先候補が多数登録しているサイトを選ぶべきでしょう。登録数が多いほどに選択肢は増え、魅力的な相手とマッチングする確率が上がります。譲渡する側はサイトのユーザー数を、譲り受ける側は案件数をチェックしましょう。

そのうえで、ある特定の業種のマッチングを得意とするサイトに注目してみてください。特に事業を譲り受けたいという人には、自分が希望する業種の案件が多いサイトで探すのが効率的です。そして譲渡する側も、自社の業種に興味を持っているユーザーが集まるサイトを使ったほうが、より有望な相手にアピールすることができます。

秘密保持契約の締結があるかチェックする

事業承継マッチングサイトで相手先に渡す情報というのは、企業にとって非常にデリケートなものです。本来であれば、匿名のよく知らない相手に決して伝えることはないのですが、マッチングサイトでは交渉の本番に入る前に、機密情報をやり取りする場面も出てきます。そのためサイト側が秘密保持契約の締結を義務化しているかは重要なポイントです。

きちんとした契約があることで、例え個人の間のやり取りであっても緊張が生まれ、情報漏洩のリスクを抑えることができるでしょう。また秘密保持契約のルールを設けていることは、登録企業の情報に対するサイト側の意識の高さの表れといえます。信頼できるサイトであるという、1つの指標になるでしょう。

サービス利用にかかる費用が適正か判断する

事業承継マッチングサイトは、仲介会社やアドバイザーに依頼するよりも価格が手頃であることはすでに説明しました。けれどマッチングサイトは他のサービスより安いはずだからと、きちんと料金システムの確認をせずに利用を始めてしまうことは危険です。サイトによっては登録料や利用料などが高額なものもあり、コストパフォーマンスを考えず何となく利用していると結果的にかなり高くついてしまったということにもなり兼ねません。

もちろん、専門知識のあるアドバイザーのサポートがしっかりしているなど、料金が高い分質も高いサービスを備えているサイトもあります。重要なのは、サイトを決める前に料金体系を確認し、よく他のサービスと比較したうえで納得して利用することができるかどうかです。

【地方の中小企業向け】日本政策金融公庫の事業承継マッチングサービスとは?

特に地方の中小規模の企業におすすめなのが、事業承継マッチング支援というサービスです。これは日本政策金融公庫による無料サービスで、日本経済、そして地域の活性化を目的としています。このサービスの大きな特徴は、個人事業主を含めた中小企業を支援の対象としていることです。さらには地方の中小企業と都市部の起業志望の人とのマッチングにも力を入れていて、意欲のある人達に地方の企業の魅力を積極的にアピールしてくれます。

利用に際しては、事業を譲渡する側も譲り受ける側も、まず日本政策金融公庫生活事業本部の事業承継支援室に相談に行きます。必要書類を提出して申し込みが完了すると、担当者が相手を選定してくれます。有料のサイトと同じく、交渉の前のアプローチ段階では匿名で話を進め、両者が交渉を望めば面談の場所を設定してくれます。原則マッチングまでがサービスの適用範囲ですが、その後何か困ったことがあれば相談にも乗ってくれます。

事業承継を成功させるならマッチングサイトを賢く利用しよう

事業承継を成功させるならマッチングサイトを賢く利用しよう

今回は事業承継マッチングサイトのメリットやデメリットについてご紹介しました。事業承継マッチングサイトは費用を抑えて手軽に利用できるところが魅力ですが、そのほとんどがあくまでもマッチングを目的としたサービスです。肝心な交渉や事業承継そのものへのサポートが手薄いというデメリットもあります。

マッチングサイトは事業承継の可能性を大きく広げるためのツールです。賢く利用しつつも、サイト任せにはせず追加で必要なサービスも検討し、主体的に成立までのプランを描いていくことが重要といえます。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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大手の営業会社で1年以上働いた経験があるライターが、客観的な情報を踏まえた上で、BtoB営業に悩まれている方に寄り添ったコンテンツを発信していきます。

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