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M&Aと聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか?大規模または中規模の企業が、事業の売却・買収をしているイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。そのため小規模な企業や個人事業主の方は、M&Aとは無縁だと思っているかもしれません。
実は最近、小規模M&Aといって小規模企業や個人事業主がM&Aを行う事例が増えています。M&Aを進めるうえでの基本的な流れは、大中規模の企業と同様です。しかしM&Aを成功させるポイントは、企業規模ごとに異なります。
今回は小規模M&Aの具体的な流れや、成功させるためのポイントを解説します。
「事業拡大のために小規模企業を買収したいが、はじめてなのでどうすれば良いかわからない」
「小規模事業を営んでいるが廃業ではなく、売却できるか知りたい」
上記のような悩みをお持ちの経営者の方に役立つ内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。
M&Aとは企業同士が合併や買収、資本提携をすることです。小規模M&Aとは、その名の通り、取引金額や対象企業の売上高が少ないM&Aのことをいいます。スモールM&Aと呼ばれることもあるようです。
一般的には取引金額や対象企業の売上高が1億円以下の場合に、小規模M&Aと呼ばれます。例えば個人飲食店を営む個人事業主が、小規模企業にその事業を売却した場合などは、小規模M&Aに該当するでしょう。
またWebサイトの売買なども、小規模M&Aと呼ぶことがあります。ただし明確な定義は存在しません。そのため専門家や当事者間で認識が異なる場合もあります。
かつてM&Aは「ライバル企業を無理やり買収するための手段」など、あまり良いイメージがありませんでした。しかし近年では双方にメリットがあることを目的としたM&Aが増え、そのイメージは変化しています。
また深刻な後継者不足や、市場の変化も小規模M&Aの注目に拍車をかけています。帝国データバンクの調査によると、全国26万6,000社における2021年の後継者不在率は61.5%でした。後継者がおらず、経営者の高齢化も進んでいる現代の日本で、小規模M&Aが注目を集めるのは自然なことといえるかもしれません。
小規模M&Aは、少ない資金で実現することも可能です。そのため最近では企業ではなく、個人が事業を買収するケースもあります。今後は個人が小規模M&Aで事業を買収し、起業する例が増えていくかもしれません。
小規模M&Aの一般的な流れは次の通りです。
M&Aは専門的な知識を多く必要とします。そのため仲介企業や専門家に依頼するのが一般的です。しかし希望する条件でM&Aを成立させるためには、自身でもある程度の知識を身につけておくことをおすすめします。一般的な流れや専門用語を理解しておくことで、よりスムーズに進められるでしょう。
小規模M&Aを検討したら、まず目標や戦略を明確にしましょう。例えば売り手側であれば「自社の弱みを補い、利益拡大を目指す」「同業を買収し、30%のシェア拡大を目指す」などです。
売り手側なら「従業員の雇用を守る」「足を引っ張っていた事業を売却し、経営のスリム化を目指す」などが挙げられるでしょう。目標や目的をしっかりと定めることで、戦略も立てやすくなります。
目標が曖昧な状態だと、戦略にもブレが生じます。結果的に、思うような結果が得られず失敗に終わってしまうかもしれません。小規模M&A成功のための大切なステップなので、時間をかけて取り組みましょう。
小規模M&Aをスムーズに進めていくためには、経営や税金関連など専門的な知識が必要です。そのため知識なく個人で進めていくのは、かなり困難といえるでしょう。特に経験がないまま個人だけで交渉に臨んだ場合、相手企業に上手く丸め込まれてしまう可能性もあります。
その結果、こちらに不利な条件でM&Aが成立してしまったということにもなりかねません。そのようなことがないように、仲介企業などM&Aの専門家に依頼するのが一般的です。企業とのマッチングや交渉はもちろん、必要書類の手続きなどのサポートもしてくれます。スムーズにM&Aを進められるでしょう。
最近ではM&Aのマッチングサイトもあります。サイト上で取引相手を探せる他、契約締結までをサポートしてくれるプランもあるので、自社に合った形のサービスを選ぶとよいでしょう。
依頼する仲介企業や専門家を決めたら、いよいよ候補企業の選定です。まず対象となる企業リストを作成します。その後、担当者と相談しながら候補企業を絞っていきましょう。候補企業が絞れたら、対象企業にアプローチしていきます。
その際、企業名がわからない範囲で情報を公開するノンネームシートを作成し、公開します。シートを見て興味を持った企業がいれば、オファーがくるでしょう。あまり詳しい情報を載せてしまうと企業名が特定され、M&Aを進めていることが外部に漏れてしまう危険があります。外部に漏れてしまうと経営に影響が出ることもあるので、気を付けなければなりません。
だからといって情報を伏せすぎてしまうと、相手側に魅力が伝わらず検討対象から外れてしまうでしょう。アドバイザーとよく相談しながら、自社の魅力が伝わるシートを作成することが求められます。
双方が興味を持ったら、企業のトップ同士の面談です。この面談ではお互いの価値観や、将来の方向性、経営ビジョンなどを話し合います。ただ条件交渉するだけではなく、信頼関係を築く場でもあります。M&Aの相手としてふさわしいかを見極める大切な面談なので、慎重に行いましょう。
面談後もM&Aを進めていきたいという意思があれば、買い手側は意向表明書を提出します。提出は義務ではありませんが、買収に前向きなことを売り手側に伝えられるので、その後をスムーズに進められるでしょう。
候補企業と面談を行ない、最終的な候補が1社に絞り込まれた時点で基本合意を締結します。基本合意は最終契約の前段階に行う仮契約のようなものです。書面で行われることが多く、基本合意書をもって契約を締結します。
基本合意書には次のような内容が記載されます。
基本合意が締結できたからといって、売り手側は安心してはいけません。このあとに買い手側は最終的な検討に入ります。合意前と後では言っていることが違うとなると、破談となる可能性もあります。基本合意締結後、買い手側からさまざまな情報の提出を求められますが、嘘偽りなく対応しましょう。
基本合意締結後、買い手側はデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買収対象企業を詳細に調査することです。これまでに公開された情報に間違いがないか、譲渡価額は適切かどうかなどを調査し、考えられるリスクを洗い出します。
これまでの情報に差異があった場合は、合意条件の変更が行なわれることもあります。またこの段階で財務や法務、その他の大きな社内トラブルが発覚した場合、買い手側は強い不信感を抱くことになるでしょう。最悪の場合、破談となることもあります。
デューデリジェンスが終わったら、その結果と基本合意の内容を元に最終交渉を進めていきます。デューデリジェンスを行なった結果、考えられるリスクがあった場合には、減額交渉やスキーム変更の交渉などを行ないます。
交渉を進め、お互いが納得したら最終契約の締結です。一般的に最終契約書は、売り手側と買い手側がお互い修正を繰り返して作り上げていきます。基本合意書と違い、最終契約書には法的拘束力が発生します。基本的な内容以外にも従業員の待遇など、細かい部分をしっかり詰めていきましょう。
最終契約の締結が完了したら、いよいよクロージングになります。M&Aにおけるクロージングとは、最終契約書の内容を元に手続きや支払いを行ない、経営権を移す段階のことです。クロージングを終えた時点で、M&Aの流れは完了となります。
クロージングではお金だけでなく、株式などの資産や人が動くことになります。そのためさまざまな混乱が起こるかもしれません。混乱を避け、スムーズなクロージングを実行するためにも、あらかじめ計画書などを作成しておくのがおすすめです。
M&Aがはじめての場合、どのようなことに気をつければ良いのかわからない方も多いと思います。ここでは小規模M&Aを検討した場合のポイントを次の3つにわけて紹介します。
小規模M&Aをスムーズに成功させるためにも、3つのポイントをぜひ押さえておきましょう。
ポイントの1つ目は「情報収集に力を入れる」ことです。M&Aにおいて決めるべきことはたくさんあります。
上記は決めなければならないことの一部ですが、それぞれなにを選ぶかにより結果が大きく変わる場合があります。特に買い手側は市場調査や、候補企業の情報をしっかりとリサーチすることが大切です。
依頼する専門家や仲介企業によっても結果が変わるでしょう。自社にあった仲介企業選びが大切です。インターネットなどで実績や評判を確認し、慎重に選びましょう。
小規模M&Aの場合、仲介企業に支払う手数料負担が高くなる可能性があるので注意が必要です。一般的に多くの仲介企業が「レーマン方式」という報酬体系を設定しています。このレーマン方式は、取引金額に応じて報酬料率が変動する仕組みです。
料率は企業によって異なりますが、例えば以下のような料率で設定されます。
取引金額が5億円までの部分・・・5%
取引金額が5億円を超え10億円までの部分・・・4%
取引金額が10億円を超え50億円までの部分・・・3%
取引金額が50億円を超え100億円までの部分・・・2%
取引金額が100億円を超える部分・・・1%
上記を見るとわかるように取引金額が少ないほうが、手数料が高くなります。つまり小規模M&Aのように小規模な金額で取引する場合は、どうしても手数料の負担が大きくなってしまうのです。また同じレーマン方式でも料率対象資産によっては、せっかく利益を得ても「手数料でほとんど手元に残らなかった」ということもあります。
少しでも手数料を減らすために、小規模M&Aに特化した業者やマッチングサイトを選ぶようにしましょう。
他社の事例を研究することも大切です。自社に似た業種のM&Aの事例を研究しましょう。事業規模も、自社と同規模の例を探して研究するのがポイントです。成功したM&Aの事例が大企業だった場合、それが小規模のM&Aでも通用するとは限りません。
また、つい成功事例だけを見てしまいがちですが、失敗事例も研究することが大切です。失敗事例を知ることで、どのようなことに気をつけるべきかを知れるでしょう。
小規模M&A(スモールM&A)の流れや成功するポイントを解説しました。後継者不足や経営者の高齢化が進むなか、小規模M&Aが注目を集めています。個人が企業を買収する例も増えてきました。
うまくいけば大きなメリットを得られる可能性がありますが、失敗すると大きな損害を被るリスクもあります。M&Aをする際は、しっかりと情報収集し、目標や戦略を明確にして慎重に進めていきましょう。
またM&Aは専門的な知識が必要になる場面も多くあります。満足できるM&Aを実現するためにも、小規模M&Aは専門家に依頼するのがおすすめです。時間と手間も省けるので、業務に専念しながら進められるでしょう。
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