【イベントレポート】ミノテ先生による「子どもが自ら学び出す 学習のススメ」
在宅ワーク特化型求人サイト『ママワークス®』が会員向けコンテンツとして開講している『オンライン de キッズスクール』。
今回は『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』の著者であり、実際に自由進度学習を取り入れた授業を公立小学校で実践したうえで、現在オルタナティブスクールの立ち上げにも参画されている蓑手章吾先生(通称ミノテ先生)をお迎えし、保護者向けにオンラインイベントを開催しました。
当日は、自由進度学習についての概要を通して、学校や家庭での教育について盛りだくさんでお話しいただきました。自由進度学習、それは今までの日本で「普通」とされている教育とはまったく違うものでした。
学びって遊びの反対?
「自ら学んでいる姿」を思い描いた際に、机に向かって教科書などを読んで勉強しているイメージを持たれる方が多いかもしれません。本当にそれだけが学びでしょうか?とミノテ先生は問いかけます。
本来、生物学的にも、学びと遊びはそこまで明確に分けられるものではないのでは、というのがミノテ先生の考えです。「教科書を使った学習」だけを学びと捉えるのではなく、実技や習い事、遊びも含めて、広く「学び」と定義し、「遊びの中に学びを」と考えて、学校教育も子育ても実践されているそうです。
自由進度学習って今までの教育とどう違うの?
ミノテ先生は、日本の今までの教育を「下りエスカレーターをひたすら上っているイメージ」と例えます。
「毎日ずっと階段を上り続けているつもりなのに、周りもみんな同じように上っているから、日々の成長実感を得られる機会が無い。ちょっとでも休んだり分からなくなったりすると、どんどん置いていかれる気がしてしまう。本来は日々成長していて、下に下っているはずはないのに…。」—————
これが勉強を嫌いにする一番の原因ではないか、とミノテ先生は指摘します。逆に簡単すぎてどんどん進めていきたい子も、そうはさせてもらえないのが今の日本の教育システムです。
本来は、それぞれの子にはそれぞれの出発点があり、それぞれに合ったペースで学習を進めていくことがふさわしく、それこそが「自由進度学習」だと言います。
ちょうど良い目標設定とは?
「自由進度学習」を進めていくに当たり、その子にとって簡単すぎず、難しすぎず、ちょうど良い目標設定をお手伝いするのが、親や教師の腕の見せどころだとミノテ先生は言います。
大人は正解した数が多いほど、安易に子どもを褒めてしまいがちです。しかし、それを簡単に褒めてしまうのはとても危険であると言います。子どもは大人の反応にとても敏感なので、褒められるために、本来その子に望ましい目標よりも下げたレベルの目標設定をするようになってしまいかねません。それでは本来伸ばせるはずの能力が伸ばせなくなってしまうのです。
子どもに、簡単には達成できないけれど、少し頑張れば達成できる目標設定をするためには、大人による「失敗の許容」が大切です。もし最初から100点を取った子が居たとしたら、それはその子にとって「残念だった」と考えてあげるべき、というミノテ先生。非常に印象的なお話でした。
家庭で大事にしたい「し・ず・む」
ミノテ先生は、親が子どもにしてあげたいことの頭文字をとって「し・ず・む」を提唱しています。
「し」は「知る」。まずは自分の子どもは何が好きなのか、何が強みなのか、苦手なこと、嫌いなことは何なのかを知ることです。好きなことをやってみて、どんなところが楽しいのか、どんなところが良いと感じているのかなど、くれぐれも親が否定をせずに、知ることが大切だと言います。
「ず」は「ずらす」。一つのことを好きだという状況が確認できたら、それだけを偏愛しすぎないように、徐々に興味をずらすお手伝いをすることです。好きなことを絵や記事にすることを勧めてみたり、感想をアウトプットする機会を与えたり、大会に応募するように促してみたり。「楽しい」から外れないように気をつけながら、興味を広げるサポートをします。
「む」は「結びつける」。ネット通販のサイトによくある「レコメンド」のように関連事項を提示することです。何かのゲームにはまっている子には、他のゲームを提案してみたり、キャラクター好きの子には、そのキャラが使われている問題集を教えてあげたり。ここでも誘導しすぎないことが重要と言います。
まずは「知る」ことから大切にしてあげたいですね。
「自分を知り、明日に希望を持ち、幸せになる力を。」
当日は、自由進度学習を実際にどのような時間配分で、どのような点に留意して小学校で展開していたのかという具体的な話も含めて、ミノテ先生には様々なお話をしていただきました。
参加した方からは、次のような感想が届いています。
「とても刺激になりました。家での子どもとの接し方が変わっていくといいです。」
「今まで普通と思っていたことが変わる内容のお話でした!!みんなそれぞれのペースで授業を受けられたらいいなーと思いました。」
「親が覚悟を持って子どもに遊ばせることも、学びなのだと思いました。ゲームからもフィードバックして発展させることを、意識してやっていきたいと思います」
ミノテ先生は、当日のお話の中で何度か「親が子どもの好きなものを否定しないこと」と強調されていました。例えば遊びやゲームだからといって、ダメなものと決めつけないことです。ゲームというのは、「成長実感を見せるもの」としてうまく作られており、子どもがどんどんはまっていきやすいものであるようです。頭ごなしに親が「ゲームは価値がないもの」としてしまうことで、子どもが「自分はダメなものにハマっている」と自分を卑下してしまいかねないと言います。
さらにミノテ先生は、日本人の幸福度が低いことも紹介されていました。自分よりも成績が下の人を見て安心してしまったり、得をしている人がいると意識的に足を引っ張ってしまったりする状況は、日本の教育システムが影響しているのではないかというお話です。
「自分を知り、明日に希望をもち、幸せになる力を。」これはミノテ先生が一番大切と考えていることです。平均に合わせることは決して大切なことではなく、一歩一歩このまま進んでいけばいつかはたどり着けると思えることが明日への希望に繋がる、という先生の言葉は非常に印象的でした。
全部で1時間を超える時間でしたが、参加者の方からは「もっと詳しくお話を聞きたかった」という声も多数あがり、またミノテ先生にはお話しいただきたいですね、という雰囲気のまま閉会しました。
◇登壇者プロフィール◇
蓑手 章吾(ミノテ ショウゴ)
特別支援校での現場経験を活かし「人間発達プログラム」で修士号を取得。
教育のICT活用にも経験豊かでコロナ禍休校中にICT推進校である小金井市立前原小学校で行った実践はメディアでも話題に。
著書に「子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた」(学陽書房)
『オンライン de キッズスクール』では、今後の講座のスケジュール、および各講座へのお申し込みを以下のページから受け付けています。一人でも多くのお子さまがこの講座で楽しく学んで、働くママの負担が軽減されますように!
https://mamaworks.jp/kidscourse/
※取材日時点での情報です