新規顧客開拓の成功率を高める営業リスト作成のコツ
新規顧客開拓は営業活動の基本。その命の綱が「営業リスト」です。ところが、これが不適切なため、今でも「千三(せんみつ:1000件のアプローチで成功が3件)」に悩んでいる営業社員は少なくないといわれます。どうすれば非効率な営業活動から脱却できるのでしょうか。
プッシュ型営業とプル型営業の特徴
営業スタイルは基本的に「プッシュ型営業」と「プル型営業」に分かれます。
プッシュ型営業とは、営業社員が能動的に顧客にアプローチする営業スタイルのこと。テレアポや飛び込み営業は、この営業スタイルの典型です。
プル型営業とは、自社の商品(製品・サービス)に対して顧客が自発的に興味を持ち、購買行動が喚起される営業スタイルのこと。顧客のニーズを探り、その解決策として自社商品の購入を勧める「提案型営業」は、この営業スタイルの代表的手法です。
どちらの営業スタイルも、それぞれ次のようなメリット・デメリットがあります。
プッシュ型営業のメリット・デメリット
プッシュ型営業のメリットは、「労力に比例して結果が出る」ことです。つまり、アプローチ数が100件なら成果は1件、それが300件なら3件という具合です。また、短期的に成果を得られやすいのもこの営業スタイルのメリットです。「押して押しまくれ」といわれるゆえんです。
対してデメリットは、人海戦術的な営業手法であることです。アプローチ件数以上の成果は得られないので、大きな成果を得ようとすれば、営業社員は朝から晩まで一日中アポ取りと営業訪問をしなければなりません。「体力と根気で勝負」ともいわれるのはこのためです。
プル型営業のメリット・デメリット
プル型営業のメリットは「レバレッジ効果が働く可能性がある」ことです。すなわち、1回の営業アクションで複数の受注が得られたり、見込みの2倍、3倍の受注が得られるケースがあるのです。
反面、成果を得るまで時間と経費がかかるのがデメリットといえるでしょう。見込み客のニーズを調査・分析し、商品のデモンストレーションやプレゼンを行い、ときにはキーマンを接待するといったことで人間関係を築くなど、「時間と経費をかけた仕込みが必要」になります。
プッシュ型とプル型の営業スタイルは、単純にどちらが良いとはいえません。それぞれ一長一短があるからです。顧客ニーズが多様化し、競争が激しい今日、営業活動は複雑化しています。いずれにせよ、従来のようにアポ電話をかけまくるだけの非効率な「千三営業」で新規顧客開拓の成果は得られません。成果を得るには、自社オリジナルの営業リストの作成と管理が不可欠です。
営業リストの作り方と管理のコツ
自社オリジナルの営業リストは、次の方法で作成するのが一般です。
自社ホームページへのアクセス記録を解析する
自社ホームページのアクセスログに残されたIPアドレスを解析し、自社ホームページにアクセスした企業や個人を特定し、それに基づき営業リストを作成します。メルマガ読者を募集するのも、この手法のひとつです。効率的にリスト情報を収集しやすい反面、見込み客としての確率は低いのが難点です。
Webサイトを検索する
企業ホームページ、各種ポータルサイト、ブログなどの検索により見込み客情報を収集し、それに基づき営業リストを作成します。比較的確率の高いリスト情報を収集しやすい反面、手作業になるので時間と手間がかかります。
クローラーでWebサイト情報を検索する
クローラー(Webサイト巡回ツール)を使って、Webサイト検索作業を省力化する方法です。最新のWeb情報を無人で収集できるのがメリットです。反面、キーワードにヒットした情報はすべて拾ってくるので情報を選別しなければならず、営業リストの作成に手間がかかります。
Webリスト販売会社から購入する
大手信用調査会社をはじめ、さまざまな業種・業態・分野に特化したWebリスト販売会社のリストを利用する方法もあります。大量のリスト情報をすぐ入手できるのがメリットです。しかし、ターゲット外の見込み客データが混じっている、欲しい見込み客データが不足しているなどの難点があります。また、購入にはそれ相応の経費がかかります。
ところで「良い営業リスト」とは、一般に次のようなリストとされています。
- ・営業効率を高めるデータの追加入力ができる
- ・アポを取るために必要な最新データが網羅されている
- ・リストに入力してあるデータを基に見込み客の属性分析ができる
- ・ほかの営業ツールと連動して営業活動全体の効率化が図れる
このような要件をすべて満たした営業リストの作成は、現実には困難と思われます。しかし、新規顧客開拓のためのアポ率を高めるには、基本的に次のデータが必要とされています。
基本データ
- ・社名、代表者名、本社所在地、社歴
- ・資本金、売上高、事業拠点数/所在地、社員数
- ・事業内容、主な取引先
- ・営業アプローチをかける部署とその責任者名
- ・連絡先(電話/FAX、メールアドレス)
追加データ(初回営業訪問時のヒアリング)
- ・営業訪問日時
- ・営業訪問に対応した部署名と対応者名・肩書
- ・ヒアリング内容
- ・初回営業訪問に対する相手の反応(どの程度興味を示したか等)
- ・次回営業訪問の可能性
ステータスデータ
- ・営業の進捗状況
「良い営業リスト」は無理にしろ、上記の営業リストなら容易に作成できるでしょう。現在、アポ率の高い営業リストの作成・管理ツールとしては、エクセルが広く利用されています。アポ取りの効率化と営業部門内の情報共有を図るためです。
エクセルによる営業リスト作成・管理のメリット・デメリット
エクセルで営業リストを作り、アポが取れたら、いよいよ営業訪問です。ここで重要なのが、営業リストへの営業結果の反映です。そのためには、新規開拓営業の進捗状況を示す「ステータス管理」を行う必要があります。
新規顧客開拓営業は、基本的に次の手順で進められます。
①アプローチ→②ヒアリング→③提案→④再訪問→⑤クロージング
最終段階のクロージングでは、
- ・概算見積書提出前……初回受注に最も遠い状態
- ・概算見積書提出済み……初回受注の予断を許さない状態。二の矢、三の矢の提案が必要かも
- ・正式見積書提出済み……初回受注に最も近い状態
と、3つのステータスが発生します。
このステータスを記入する個所が、前項で説明した営業リストの基本データ「3」のステータスデータになります。
ステータスをエクセルで管理するメリットは、汎用的なスプレッドシートなので操作が容易なところです。ただし、ステータス管理をこまめにしないと進捗状況が見えないというデメリットがあります。
さらに、エクセルは個人使用を前提に設計されているので、部門共有ファイルで保管していても、誰かが営業リストを閲覧しているとほかの者は閲覧できません。すなわち、営業部門内の情報共有ツールとしては不便といえます。
従って、新規顧客開拓の営業効率を高めるには、営業リスト作成はエクセルで行っても、アプローチ以降の営業リスト管理はCRMかSFAで行うといったように、システム系営業管理ツールとの併用を検討する必要があるでしょう。
理想的な営業リストとは?
電通デジタルが、法人営業担当者500名を対象に実施した「法人営業の営業リストに関するアンケート調査」(2016年7月1日発表)結果によると、
・営業社員の75.4%が「営業リストのすべてにアプローチできていない」
・営業リストとして重視するのは、「件数の多さより情報の新しさ」が74.4%、「情報精度の高さ」が73.8%、「顧客を理解できる情報が揃っている」が69.6%
などとなっています。
この調査結果からは、自社商品に対する見込み客の興味・関心等の認知状況を事前に把握でき、タイムリーで精度が高い営業リストを求めている様が見て取れます。「同感だ」と思う営業社員の方々が多いのではないでしょうか。
営業社員の多くが欲している理想的な営業リストを実現するには、新規顧客開拓向けに特化した「クラウド型営業リスト作成・管理ツール」の導入を検討するのも一考でしょう。