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M&Aを成功させるためには、仲介会社の存在が欠かせません。M&Aには、まず事業を譲渡する側と譲渡される側の明確な利害関係があります。その一方で日本の中小規模の会社経営者の多くは、友好的なM&Aを望んでいます。相手側と円満な関係のまま成約したいけれど、自社の利益をしっかりと守らなくてはならない。M&A仲介会社は中立的な立場で介入し、経営者のこのジレンマを解消してくれます。
さらにM&Aの専門家としてアドバイスしてくれ、魅力的な相手先企業の紹介もしてくれるのです。特に事業承継などにより初めてM&Aを考えることになった経営者にとって、M&A仲介会社はとても頼もしい存在でしょう。
では具体的にM&A仲介会社はどのようなサービスを提供してくれるのでしょう。依頼からM&Aの成立までの間に、仲介会社の役割は大まかに3つに分けることができます。まずは事業を譲渡する側とされる側のマッチング。そしてM&Aで必要な、多岐に渡る専門的知識のアドバイス。そして最後に、実際の売買交渉への介入です。
M&A仲介会社というと、交渉の間に立って調整してくれるというイメージが主だと思いますが、実はその前段階にあたるマッチングや法務面や税務面でのサポートというのがとても重要なサービスになるのです。
言うまでもないことですが、事業の売却や買収には相手企業が必要になります。日本全国、あるいは海外にまで視野を広げると、無数にある企業の中からどこを選んで交渉を持ちかければいいのか途方に暮れることでしょう。
時間をかけてゆっくり魅力的な相手を探すことができればよいのですが、事業にも売り時がありますし、特に経営者の高齢化などで事業承継を急いでいる場合には時間的余裕も無いでしょう。もちろん焦って不本意な相手と交渉することになるのは望ましくありません。
M&A仲介会社は、事業の売却や買収に興味がある多数の企業の情報を持っています。自社のM&Aにおける目的や譲れない条件などを伝えれば、それに該当する相手先企業を紹介してもらうことができるのです。
M&Aは専門的な知識を必要とする、とても複雑な問題です。ただ両社間で決まった金額をやり取りするだけでなく、税務上の処理、法務面での手続きなどが発生します。M&Aが成立するまでにやるべきことを全て把握している経営者は少ないでしょう。そのためいくつもM&Aの仲介を手掛けたプロである仲介会社にアドバイスを求めるのです。
さらに知識やノウハウが求められるのは事務的な問題だけではありません。M&A成立後も取引先企業や従業員に不利益がないように、事業の売却のときには慎重に契約を交わす必要があります。M&A仲介会社は経験に基づき、契約内容に問題が無いかを中立的な立場で判断してくれます。このように多角的な知識と経験で、M&Aの交渉前から成約までサポートするのが仲介会社の役割です。
互いの利害が絡んだ問題では、直接コミュニケーションをとらないほうが話がスムーズにいく場合が多くあります。M&Aにおいても、例え経営者同士の関係が元々良好だったとしても、交渉を進める中で悪感情が芽生える可能性はゼロではありません。さらにいざ契約内容を固める段階になって、条件について言った言わないの水掛け論になってしまうこともあり得ます。M&A仲介会社が間に入ることで、無用な衝突を避け、冷静に条件を擦り合わせていくことが可能です。
また交渉が決裂してしまうパターン以外にも、相手先企業に遠慮してしまって、希望をちゃんと伝えられないままに成約してしまうというケースもあります。事業の売買という重要な局面で後悔を残さないためにも、M&Aの仲介会社を通して納得いくまで交渉するほうがよいでしょう。
M&A仲介会社と似通ったサービスを提供するのが、ファイナンシャル・アドバイザー、通称FAです。どちらも企業のM&Aをサポートする役割ですが、その立ち位置に決定的な違いがあります。M&Aアドバイザーはあくまでも中立。売却側と買収側の双方の利益を追求します。
反対にFAは売却側か買収側、どちらかにつきます。そして担当する企業の利益だけを追求してM&A交渉に臨みます。売却側のFAも買収側のFAも自分のクライアントの要求を通そうとして利益相反となるので、仲介会社が間に入るケースよりも交渉は難航する可能性があります。
すでに述べたとおり、M&Aにおいて仲介会社はとても重要な役割を負っています。そのため、最初にどの仲介会社に相談するかは慎重に判断しなくてはなりません。M&A仲介会社は知名度や実績も大切ですが、それぞれにサービスの特性があります。自社が求めるサービスを提供してくれる会社なのか、見極めが大切です。
また会社によって手数料のシステムにも違いがあります。せっかく着手金や契約成立までの中間金を支払ってきたのに、仲介会社に払う手数料がかさんだために、途中で断念せざるを得なかったという事態にならないように、各社の料金体系についても事前にしっかり理解しておきましょう。
まず重視するべきなのが、仲介各社の実績です。M&Aの経験が豊富ということは、それだけ沢山の相手候補となる企業の情報を持っているということです。相手先企業の選択肢が広がれば、理想とする条件でのM&A成約の可能性が高まります。
逆に自社の事業にどれだけ価値があったとしても、限られた選択肢の中で相手先企業を選ばなくてはならないとすれば、納得のいく条件で取引することは難しいでしょう。両社のマッチングを担う仲介会社には、取引先企業の広いネットワークが必須です。
また仲介会社の実績を見るときも、自社と同じ規模の企業のM&Aをどれだけ手掛けてきたかに注意を払うようにしてください。これは一口にM&Aといっても、企業規模によって必要となる知識やネットワークには大きな違いがあるからです。
見落とされがちなポイントですが、M&Aに必要な資格を持った専門家が仲介会社にちゃんと在籍しているというのは大きな強みです。すでに述べたとおり、M&Aには多方面の専門的知識が必要になります。どの仲介会社も公認会計士や税理士、弁護士、司法書士、中小企業診断士といった専門家と連携しながらM&A成約までの業務を進めていきます。
ですが仲介会社に依頼する経営者からすると、専門的な事を尋ねたいときに、まず仲介会社に連絡し、それから仲介会社が外部の各専門家に相談するという流れになるので、どうしてもスピード感が損なわれます。仲介会社に専門家が在籍していれば迅速に対応してもらえますし、必要なときに交渉の場にも同席してもらえるので心強いでしょう。
M&A仲介会社には2つの種類があります。1つが特定の業種の案件だけを手掛ける、業界特化型。もう1つが業種を限定することなく、あらゆる案件に対応できる非業界特化型です。それぞれにメリットがあるので、依頼するときにはどちらのタイプが自社の希望に沿っているかをよく考えましょう。
業界特化型は、専門とする業界の事情を知り尽くしています。M&Aの仲介においても、その知識とノウハウを生かした、より有益なアドバイスが期待できます。特に実店舗型のサービス業や医療・介護系の業界では、特化型の仲介会社が活躍しています。
一方、非特化型の仲介会社は相手先企業の紹介の幅が広いことが魅力です。全く異業種の企業で、思いがけず魅力的な相手とマッチングする可能性もありますし、当初は予想していなかったようなメリットが得られるかもしれません。
M&Aの資金面が気がかりな場合は、仲介会社に支払う手数料のシステムもしっかり確認しましょう。会社によって最初に着手金が必要なところ、さらに毎月のリテイナーフィーがかかってくるところなど、料金体系は様々です。もし仲介会社に依頼したものの、結局M&A交渉がまとまらずに手数料だけが払い損になってしまうと、その後のプランにもマイナスの影響を及ぼすことになります。
できるだけリスクを抑えたいと考えるなら、完全成功報酬型の仲介会社を選ぶことをお勧めします。仲介会社への手数料が発生するのはM&Aの成立が決まってからなので、無駄なお金を払わなくて済むと、特に小規模企業の経営者の方々に人気です。
手数料は大きく分けて、着手金、中間金またはリテイナーフィー、そして成功報酬の3種類となっています。依頼する側にとって、金銭的には成功報酬型が最もメリットがあるように感じられますが、着手金や中間報酬を支払うことでより質の高いサービスが受けられる可能性もあります。
また一口に成功報酬といっても、会社によってその計算方法は様々ですから、仲介会社に依頼する前には慎重に手数料についての確認を行うことが必須です。後からお金の問題で後悔することがないように、ここではM&A仲介会社に払う各種手数料について、より詳しくご説明します。
着手金は世間一般でいうところの手付金にあたります。仲介会社にまず着手金を払うことで、候補先の紹介などのサービスを受けることができるようになります。着手金が必要かどうかは仲介会社によって違います。着手金がかかる会社を敬遠する経営者もいますが、最初にお金を払うことで、仲介会社が相手先候補の選定など初期段階のアクションにちゃんとリソースを割いてくれるというメリットもあります。
1つ注意すべきなのが、M&Aが成立しなかった場合も着手金は一般的に戻ってこないということです。着手金の相場が概ね100万~300万円程なので、成約につながらなかったときには小規模の企業にとって手痛い打撃となりかねません。着手金が必要な会社に依頼するときは、どの程度成約の見通しがあるか、譲渡価格はどのくらいになりそうか等、事前にしっかりと確認をとるようにしましょう。
最初の着手金と、成立後に払う成功報酬の間の段階で必要となる手数料もあります。種類として2つのタイプがあり、契約期間中に毎月一定額を支払うのがリテイナーフィー、相手先企業と基本的な合意に達したときに払うのが中間金と呼ばれる手数料です。
このうち特に中間金に関しては、相場や支払うタイミングなど仲介会社によって様々なシステムがあるので注意しなくてはなりません。一般的に相場は成功報酬の10~30%とされていますが、その算出方法が仲介会社によって異なるので事前に確認が必要です。
支払いのタイミングで最も多いのは、相手先企業と基本合意書を取り交わしたときです。ここでM&Aを一定の段階まで進めたことに対する報酬として仲介会社に中間金を払います。そのため中間金はもしその後M&Aが成立しなかったとしても返還はされません。
成功報酬はその名のとおり、M&Aが成立して初めて発生する報酬です。成功報酬を算出する方法として、仲介会社の大半がレーマン方式、あるいはリーマン方式と呼ばれるシステムを採用しています。取引金額が5億円以下なら5%、5億円を超えて10億円以下の部分には4%というように、一定の料率をかけて報酬額を決定します。
このとき気をつけなくてはならないのは、取引金額の定義に2つのパターンがあることです。シンプルに譲渡価格を意味する場合と、移動総資産を意味する場合、この違いによって同じ成功報酬であっても金額に大きな差が生まれます。
移動総資産には純資産だけでなく、事業を売却する企業が抱える負債の額も含まれます。そのため負債の額が大きければ大きいほど、仲介会社に支払う成功報酬も多くなってしまうのです。成功報酬は成立するまでは払わないものだからと油断せず、仲介会社への依頼前にしっかりとシステムについて確認しましょう。
現在日本には多くのM&A仲介会社が存在します。そしてそれぞれにメリットや料金体系の違いがあるので、依頼する側は各社をよく比較検討してから、1つの仲介会社を選ぶのがよいでしょう。自社に適したサービスを提供してくれる仲介会社を見極めるには、何よりも担当者から直に話を聞いてみるのが一番です。
理想的な相手先企業の情報を持っているか、迅速に交渉をまとめてくれるか、専門的知識で丁寧にサポートしてくれるか、あるいは納得できる手数料のシステムを採用しているか。こうした条件をクリアできる仲介会社を見つけることが、満足のいくM&A成立への第一歩となるのです。
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