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中小企業間でも盛んにM&Aが行われている現在、事業拡大のためM&Aを視野に入れている経営者の方も多いでしょう。M&Aは売り手企業と買い手企業の2社だけでも行うことは可能ですが、一般的に仲介業者やアドバイザーといったプロに依頼して進めていきます。
これは各方面の専門知識が必要となり、さらには直接交渉するより円滑に契約がまとまる可能性が高くなるためです。難しい手続きや交渉を任せることになるので、当然報酬が発生します。今回はM&Aにかかる手数料について詳しく解説していきます。
M&Aでは、仲介業者への依頼からM&A成立までの各段階において、それぞれ違った手数料がかかってきます。主に相談料、着手金、中間報酬、成功報酬などですが、仲介業者やアドバイザーによっては成功報酬以外の手数料は発生しないところもある等、料金体系は依頼先によって様々です。
ここではM&Aで支払う可能性がある各種の手数料について、細かく見ていきましょう。手数料の金額についても、担当する企業や案件の規模によって違いがありますが、中小規模のM&Aの相場を中心に解説していきます。
正式な依頼をする前の相談の段階でも、手数料が発生する可能性があります。これを相談料と呼び、一部の仲介会社の料金システムで採用されています。ほとんどの仲介会社では事前の相談は無料としています。ですが、例えばM&A成立の可能性を判断するのにも、プロの経験や専門的な知識を要するので、その分の手数料という考え方です。
価格はM&A手数料の中ではごく少額で、5,000円~1万円程度となっています。せっかく相談するのであれば、手数料がかかったとしても、信頼できるプロの目線から、自社の強みや法務や税務などの注意点についてしっかり確認しておきましょう。
相談してみて、いざM&Aに向けて動き出すと決断すれば、まずM&A仲介会社に着手金を支払います。仲介会社はこの着手金を資金として、M&Aの相手先候補を探したり、各種の調査を行います。着手金はこの初期段階の労力に対して支払われるものなので、最終的にM&Aが成功しなくても返金はされません。
近年では、この着手金も無料にする仲介会社が増えています。有料の場合の金額は様々ですが、大体100万円~200万円が相場になっています。着手金無料は魅力ですが、有料の仲介会社には、お金を払っても絶対にM&Aを成功させたいという意欲ある企業の情報が集まるという利点があります。
M&Aの相手先候補が見つかれば、次は買い手側が売り手企業を調査するためのデューデリジェンス費用が発生します。売り手企業の財政や法務、人事など、売買交渉の前に細かく精査します。ここで実際の調査を行うのは各分野の専門家で、法務関係は弁護士、財務は公認会計士といった具合です。デューデリジェンス費用は、これらの専門家への報酬として支払われます。
デューデリジェンスの費用は調査範囲をどこまで広げるかで異なります。ですが大体200万円程度が一般的な相場となっています。また原則デューデリジェンスは買い手側企業の問題ですが、M&Aの手法として株式交換を選択する場合には、売り手側も買い手企業の株式価値を知るために調査を行います。
月額費用はリテイナーフィーとも呼ばれ、仲介会社と契約してからM&A成立までの間に毎月支払う報酬を指します。仲介会社のコンサルタントやアドバイザーは、実際に基本合意が締結されたり、M&Aが成立するまでの間も調査や交渉で常に活動し続けています。月額費用は、これらの活動に対する実費の意味合いが強いものです。
月額費用は取らないという方針の会社も多いですが、やはり費用が発生するほうがコンサルタントのモチベーションも高まり、M&Aでより良い成果が上がるという側面もあるでしょう。有料の場合は月額30万円~50万円程度が相場とされています。
中間金は、仲介会社がM&Aの交渉を一定の段階まで進めたことに対して支払われる報酬です。一般的に売り手側と買い手側でM&A基本合意書を締結したときが、支払いのタイミングとなります。着手金同様、もしM&Aが結果的に成立しなかったとしても返金はされません。
中間金の価格相場は大きく分けて、無料の場合、50万円~200万円程の固定報酬の場合、あるいは成功報酬の10%~20%がかかる場合の3パターンがあります。会社によっては支払った中間金の分を、最終的な成功報酬から差し引いてくれるところもあるので、料金システムはよく確認しておくようにしましょう。
M&Aが成立した後に仲介会社に支払われるのが、成功報酬です。成功報酬は金額が大きく仲介会社の主たる収益源であるため、仲介会社はM&Aを成立させるため力を尽くします。
成功報酬の算定には、一般的にレーマン方式という計算方法が採用されています。レーマン方式では取引金額の5億円以下の部分には5%、5億円を超えて10億円以下の部分には4%、10億円を超えて50億円以下の部分には3%というように、一定の料率をかけて成功報酬を設定します。
一見明解なように思えますが、計算の基となる取引金額の定義が仲介会社によって異なります。シンプルに取得価額や譲渡費用で計算する会社もあれば、移動総資産で計算する会社もあるので注意が必要です。移動総資産では売り手側の負債額も含まれるので、結果的に成功報酬の金額も大きくなる可能性が高くなります。
M&Aで支払う手数料の多くは、人件費です。1つの企業を売買する過程では、組織体制、社内システム、人事、資産に加えて、法務面や税務面でも統合に必要な手続きをしなくてはなりません。法務であれば弁護士、税務であれば税理士、財政面では公認会計士というように国家資格をもったプロに依頼して問題を処理していく必要があるため、必然的に費用が嵩んでいくのです。
もし仲介会社に依頼せずに自社だけでM&Aに取り組んだとしても、手続きの性質上、こうしたプロに依頼するためのコストは避けて通れません。仲介会社を通すことで各専門家を自分で探したりやり取りする手間も省け、経営者は本業に集中することができるでしょう。
M&Aの手数料の負担は、M&A仲介契約のスタイルによって変わります。M&Aサポートのサービスには2種類あり、売り手と買い手双方と契約して両者の利益を追求する仲介型と、売り手か買い手どちらかと契約して依頼主の利益だけを追求するアドバイザリー型に分かれます。仲介型ではM&Aにかかった費用を売り手と買い手が分担して支払うことになり、アドバイザリー型ではアドバイザーと契約している会社が費用の全てを支払います。
仲介型は両手取引とも呼ばれ、売り手と買い手の利益を上手く調整しながら交渉を進めるため、M&Aがスピーディーに成立しやすい傾向にあります。国内では中小規模の案件では仲介型が一般的で、アドバイザリー型のサービスは、自社の利益を守りたい大企業同士のM&Aで多く
利用されています。
M&Aを成功させるためには、何よりもサポートを依頼する専門家の見極めが重要です。仲介会社としての実力の有無も大切ですが、手数料の料金システムもよく確認しておかないと、いざM&Aが成立する前に資金が尽きてしまうという事態にもなりかねません。
また現在は多種多様なM&Aの仲介会社があり、それぞれに得意分野が分かれています。実績のある有名な仲介会社でも、本当に自社のM&Aに適した会社なのかを確認しておく必要があるでしょう。ここでは仲介会社を選ぶ際のポイントについて解説します。
M&A仲介の手数料のシステムは様々です。会社によって相談料や着手金が無料なところ、さらに中間報酬も無料なところがある一方で、月額報酬もかかる会社もあります。また一番重要な成功報酬の計算にしても、会社によって違いが出てくることは既に説明しました。成功報酬以外の費用はかからないという仲介会社は一見するとお得に見えますが、ひょっとすると成功報酬が高額で、結果的には高くつくという可能性もあります。
M&Aは数カ月や長くて1年以上かかるケースもあります。依頼の前にしっかりと料金システムを確認しておかないと、せっかくそれだけの時間をかけて交渉を進めてきたのに、手数料が嵩んで成立まで到達できないかもしれません。後々依頼先とトラブルにならないよう、事前に納得できるまで手数料について説明してもらうようにしましょう。
新しい会社と取引をするとき、相手先の実績を確認するのは当然のことです。ですがM&A仲介会社の場合は、その内容に特に注意する必要があります。例えば中小規模同士のM&Aを検討している場合、有名な大手企業との取引実績を謳う仲介会社を選んでも、望むようなサービスを受けることはできないでしょう。M&Aでは、自社と同じような規模の案件を多数成立させている会社を選ぶべきです。
また特定の業種の案件を得意とする仲介会社も多いので、特に医療・介護事業や店舗型サービス、WEBサイトの売買を考えている場合には、その分野に特化した仲介会社を選ぶようにしましょう。類似の案件を成功させてきた仲介会社にはノウハウがあるので、安心して任せることができるのです。
すでに述べたとおり、M&Aには各方面の専門的知識が必要不可欠です。M&Aのサポートを依頼する場合には、相手が必要な知識や経験、そして資格を持っているかは事前に確認するべきでしょう。特に買い手側企業にとって、買収先企業の事前調査は重要です。後々トラブルに見舞われないようにするためには、弁護士や公認会計士、税理士といった専門家にしっかり精査してもらわなくてはなりません。
M&A仲介会社に依頼する場合、自分で弁護士等を手配する必要はないかもしれませんが、仲介会社がどのように各種専門家と連携をとっているのかは確認しておきましょう。仲介会社も外部の専門家に依頼するケースが多いのですが、もし社内に資格保持者がいればより柔軟にスムーズに対応してもらえます。
中小企業の多くはM&Aの経験そのものがありません。そのためいざ仲介サービスを利用しようと思っても、その手数料が妥当なものか判断に迷う場面はあるでしょう。ここでもおおよその相場についてはお伝えしてきましたが、自分が実際に検討しているサービスの適正価格を知るのに、公的機関が示しているガイドラインを参考にするというのもおすすめです。
中小企業の後継者不足の問題などを解消するため、現在では国を挙げて中小規模のM&Aの促進が行われています。その一環として経済産業省が「中小M&Aガイドライン」を策定しました。そこではM&Aのプロセスや注意点と併せて、各種手数料の基準も示されています。具体的事例も入れて解説されているので、自社の場合と照らし合わせて参考にすることができるでしょう。
M&Aの仲介手数料のシステムは会社ごとに異なり、特に高額となる成功報酬の計算方法には注意が必要です。またこれまで見てきたように、M&Aの手数料には必要不可欠な人件費も含まれているため、ただ手数料が安いことが一概にお得とはいえません。M&A案件を成功させるためには、費用がかかっても安心して専門家に任せられる仲介サービスが必要です。
一番いいのは複数のサービスを比較することで、サービス内容や実績に価格が見合っているのかを検証することでしょう。しっかり比較検討したうえで、納得して仲介会社を選ぶようにしましょう。
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