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経営者は事業体の成長を考えるとともに、自身が引退する際のシナリオについても考えておく必要があります。「その時が来てから考える」と先延ばしにしていては、後継者にふさわしい人材が育っていなかったり、税制上の優遇措置を受けられなかったりといった不都合が生じるでしょう。
経営者自身が検討しておくことも大切ですが、専門家の支援を受けてロードマップを作成しておいた方が、スムーズな事業承継を実現できます。事業承継に関する支援制度とサポート機関の選び方について解説します。
2016年時点で日本の法人の99.7%は中小企業が占め、雇用者数に対しても7割もの人々が働いており、日本の経済活動を支えています。しかし、中小企業の経営者年齢は年々上昇しており、2025年の超高齢化時代への突入が近づくとともに、承継問題がクローズアップされています。
経営者の引退適齢期が70歳といわれるなか、団塊世代から後継者世代への引き継ぎがスムーズに行われるか否かで、地域経済の縮小化や中小企業のノウハウ喪失の恐れがあるためです。そこで、国の施策として事業承継施策が複数年にわたって打ち出されてきました。
主な支援制度は、「事業相談のできる公的機関の設置」と「事業承継およびM&Aに関する税金減免」です。現経営者か希望するルートへスムーズに進めるよう、政府機関や民間サービスの力を借りながら早めに準備しておくことをおすすめします。
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事業承継について相談できる公的機関には以下のものがあります。
・事業引継ぎ相談窓口(中小企業庁管轄:全国47都道府県)
・事業引継ぎ支援センター(中小企業庁管轄:北海道・宮城・東京・静岡・愛知・大阪・福岡)
・後継者人材バンク(事業引継ぎ支援センターが行うマッチングサービス)
・よろず支援拠点(国が設置した経営相談所:全国47都道府県)
他に、自治体独自の経営相談窓口が設置されていることもあります。公的な支援機関を利用するメリットは、ほとんどが無料で相談できることです。「何度でも無料」とうたっている支援機関もあり、継続した相談が可能です。
民間サービスで、相談回数ごとに費用がかかる場合には、「事業承継とは何か」「どのような承継シナリオが自社に適応できるか」といった初歩的な説明を受けるだけでも費用がかかってしまいます。公的機関を利用して、ある程度の基礎知識を身につけてから民間サービスを利用するなどすると、全体的な費用を抑えることができるでしょう。
公的な支援機関は、利益追求を目的としていない点で信頼をおけるといえますが、民間サービスに比べると、対応スピードの遅さや支援実績の少なさが気にかかるかもしれません。また、一般的にもまだあまり知られていないため、マッチングサービスがあっても登録者が少なく、理想的な相手に出会いにくいと感じることがあります。
相談員のプロフィールや実績を公開している機関の利用を検討したり、公的マッチングサービスと並行して、民間のマッチングサービスにも登録したりするなど、上手に活用していきましょう。
事業承継については公的機関への相談の他に、民間のサービスを利用する方法があります。民間サービスには、「M&A仲介業者」「M&Aマッチングサイト」「士業の専門家」などがあり、それぞれの領域でしっかりとサポートを受けることができます。
M&Aときくと、「会社を売りたいわけじゃない」「従業員の雇用を守れるのか」といった不安が生じるかもしれません。テレビなどで大きく報道されるのは「敵対的M&A」であり、本来のM&Aは事業の拡大・継続のためにも有効な手段です。親族内承継・社内承継が難しい場合には、M&Aを得意とする民間サービスへの相談を検討してみましょう。
M&A仲介業者は、「M&Aセンター」「M&Aアドバイザー」「M&Aサポート」「経営コンサル」などの名称で数多く存在しています。仲介業者の主な役割は、売り手企業(譲渡企業)と買い手企業(譲受企業)の間に入り、双方の条件を整理して、友好的なM&Aを実現させることです。
M&Aには、企業の資産管理や法務・税務などの幅広い知識が必要で、マッチング後も「中立的・客観的」な判断により、事業承継がスムーズに行われるよう適宜サポートを行ってくれます。しかし、M&A仲介業者には「仲介型」の他に「アドバイザリー型」があり、自社のメリットを最大化するための交渉を望むなら、「アドバイザリー型」の業者を利用するとよいでしょう。
内部リンク:m&a 事業承継
M&Aマッチングサイトとは、主にインターネット上で売り手企業(譲渡企業)と買い手企業(譲受企業)、または売り手企業(譲渡企業)とアドバイザリーとが出会う場所を提供しているサービスのことです。企業側は匿名で登録されており、閲覧できる情報には限りがあることも。
気になった企業へリクエストすることでさらに詳細な情報を得られ、オファーの意思を伝えて相手側が承諾すればマッチング成立となります。一般的なマッチングサイトでは出会いの場を提供しているだけで、事業承継の具体的なフローは担当しません。
M&Aを進めるには、当事者同士で交渉にあたるか、マッチングサイトに仲介業者を紹介してもらう、第三者となる業者を探すといった方法になります。
内部リンク:事業承継 マッチング
事業承継については、「公認会計士」「税理士」「弁護士」「司法書士」「中小企業診断士」などの士業の助けを借りて成立させるケースもあります。事業承継の際には、資産の売却や親族内外への贈与・相続などが複雑に絡むため、税務上の対策が欠かせません。しかし、単純な親族内承継であれば、税務関係は税理士に、登記関係は司法書士に依頼して実行することも可能です。
また、M&Aや事業承継の税制優遇措置を受けるには、過去の財務状況や法務状況を調査する必要があります。自社の経理部門・法務部門で必要な業務を整理しきれない場合には、公認会計士や弁護士など専門家への依頼を検討しましょう。
内部リンク:事業承継 専門家
実績豊富な民間の事業承継サービスを利用すれば、確かな知見によるアドバイスを受けることができます。仲介業者によって得意な手法や業界がはっきりしていることもあり、自社に見合ったサービスを提供している業者と出会えれば、質の高いサポートを受けられるでしょう。成果報酬型の料金体系であればなおのこと、良質な相手先探しやしっかりとメリットのあるM&Aを進めてもらえるでしょう。
士業の専門家に依頼する場合も、事業承継全般に対するコンサルティングは難しいものの、得意分野や専門分野がはっきりしている分、依頼する件に関しては満足度の高い業務遂行が期待できます。
民間の事業承継支援サービスを利用する際のデメリットには、コストの問題があります。M&A仲介業者では成果報酬型をとることが多く、買収額に対して一定の割合を取り決めてからM&Aがスタートします。
企業の資産価値が上がるほど業者の利益も上がるため、真剣に取り組んでもらえる反面、評価額によっては想定以上の支払いが必要となるケースも。仲介業者への支払いのために現金が必要となれば、経営者の引退後のマネープランに影響が出るかもしれません。
また、業者が利益を追求するあまり、経営者の望まない形でのM&Aとならないよう、方針をしっかりとすり合わせておきましょう。
士業の専門家に依頼する場合は、報酬額の相場は数万円~数十万円と幅があるため、複数箇所あるいは細切れに依頼しているうちに、「全体では大きな金額になってしまった」となるリスクがあります。
事業承継の相談先には、公的機関や民間業者などさまざまなものがあります。具体的に相談を始める前に、自社に適したサービスはどこなのか、選ぶ視点を持っておくを安心です。「過去の実績」「得意分野」「料金体系」「担当者との相性」の4つのポイントを紹介します。
事業承継は、企業体の未来に関わる大きなターニングポイントです。スムーズな進行と確実な遂行のために、パートナーとなる支援機関の実績を確認しておきましょう。
実績を公開している支援機関の方が信頼でき、その数が多いほど、多くの経験を有していると判断できます。また、売り手側の事業内容・業務に詳しくない人が担当になると、事業やノウハウ、特許資格などの価値に気づいてもらえないことがあります。できれば、自社と同規模・同業種の実績について詳しく確認しておきたいところです。
また、公式サイトなどで実績が公開されていても、担当者となる人物が関わっていたとは限りません。自身がモデルとしたい事例があるなら、その担当者を指名できないか確認するとよいでしょう。
支援機関には、事業承継・経営コンサルについての専門家が在籍していますが、すべての支援機関が事業承継の全フローを担当できるとは限りません。公認会計士・税理士・弁護士・司法書士・中小企業診断士といった資格の違いから担当できる分野に違いが生じることがあります。
相談したい分野や業界に精通している支援機関なのか、しっかりと確認しておきましょう。依頼可能な範囲についても確認しておかないと、「ここから先の業務はご自身で」「申請については別の専門家に依頼を」と事業承継の最後までパートナーとして並走してもらうことができないかもしれません。
公的な支援機関は相談無料としているところが多くありますが、各種申請やM&A業務を士業や民間業者へ依頼する場合には、さまざまな費用が必要となります。業者によって「着手金」「中間金」「成功報酬」といった項目があり、事業規模や業務内容によっても金額が異なります。
公式サイトなどで料金のモデルプランを提示してあっても、自社に適用されるかは具体的な相談をしないとわからないので、きちんと見積もりをとっておきましょう。
また、支払いのタイミングによっては、買い手側からの入金前にまとまった費用が必要となるケースもあります。支払いトラブルによって事業承継を頓挫させないためにも、金銭的なスケジュールも確認しておくことをおすすめします。
支援機関の担当者は、よりよい事業承継を実現させるパートナーであり、アドバイザーでもある存在です。経営者が大切に育ててきた事業を託す相手として、実績はもちろん人柄や誠実さ、ビジョンを共有できるかなどの相性についても、こだわって探したいところですね。
特にM&Aを実行する際には、経営者側の条件提示が成功のカギを握っています。単純な利益計算だけでなく、「従業員の雇用を守りたい」「地域経済を守るために移転しないでほしい」「この特許だけは譲れない」など経営者側の希望をくみ、熱意を持って交渉にあたってくれる担当者と出会えれば、満足のいく事業承継がかなうでしょう。
経営者の引退時期には、「親族内事業承継」「親族外事業承継」「M&Aでの事業承継(事業承継型M&A)」「廃業・資産整理」など、事業をどのように承継していくのか検討する必要があります。相談無料の公的支援機関を利用して、自社に適したルートをイメージしておきましょう。
民間の支援機関には、さまざまなタイプがあります。「最初に調べたところがよさそうだから」とパートナーを簡単に決めてしまっては、事業承継に失敗する可能性も高くなるでしょう。複数のサービスの「得意ジャンル」「料金体系」「担当者の実績と相性」などを確認し、比較検討してから正式に依頼することをおすすめします。
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