事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)とは?過去の事例も紹介

費用を抑えて事業承継するには補助金の活用が重要

現在、日本国内の中小企業では、少子高齢化に伴う「後継者不足」が深刻化しています。後継者がいないという理由から、これまで育ててきた事業を廃業する数が増加しているのです。

事業承継は多額の費用が必要となる場合もあるため、つい後回しにしてしまいがちですが、近年では補助金制度があります。費用を抑えて事業承継するためには補助金の活用が重要です。

今回は事業承継補助金について詳しくご紹介します。事業承継にはさまざまなパターンが存在するので、過去の事例も併せてお伝えします。

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)とは?

事業承継補助金とは、2019年2月5日に中小企業庁が発表した補助金制度です。事業承継・世代交代集中事業の取り組みの一環であり、事業承継を円滑に進めるため創設されました。後継者がいないことを理由に事業の継続が困難になることのないよう、経営者交代やM&Aに関する支援を行います。

また事業承継を機に新しく事業を始める経費も補助します。後継者が引き継いだあとの設備投資や事業販路拡大時に補助金があると、思い切ったチャレンジが可能です。事業承継補助金の対象は、事業承継後の新たなチャレンジへの費用と、事業転換や革新で廃業する際に必要となる経費の一部となります。

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の対象

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の対象

事業承継補助金補助の対象となるものを確認しておきましょう。補助の対象には3つの枠組みがあります。一つ目は事業承継を契機とし事業拡大などの新たなチャレンジを補助する「経営革新」、二つ目は引き継ぎ時に専門家へ相談するなどの活用費用を対象とした「専門家活用」、三つ目は事業を引き継いだ後に新たな取り組みに向けた廃業が必要となった場合の「廃業・再チャレンジ」です。

今回はそれらの中から「経営革新」と「専門家活用」の対象について詳細をご紹介します。

事業承継補助金(経営革新)の対象

「経営革新」には経営者交代型のⅠ型と、M&A型のⅡ型があります。

【経営者交代型の対象となる条件】

・事業承継を契機として経営革新等に取り組むものであること。
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受けるもの等、一定の実績や知識等を有しているものであること。
・地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等創業を契機として、引継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組むものであること。

【M&A型の対象となる条件】

・事業再編事業統合などを契機として、経営革新等に取り組むものであること。
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識などを有しているものであること。
・地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業などの事業承継を契機として、経営革新などに取り組むものであること。

これらはいずれかの要件を満たせば良いのではなく、すべての要件を満たす必要がありますので注意しましょう。

事業承継補助金(専門家活用)の対象

専門家活用には買い手支援型のⅠ型と、売り手支援型Ⅱ型の、2種類があります。

【買い手支援型の対象となる条件】

事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等であり、以下のすべての要件を満たす必要があります。

・事業再編事業統合等に伴い、経営資源を譲り受けた後にシナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
・事業再編事業統合等に伴い、経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

【売り手支援型の対象となる条件】

事業再編事業統合等に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者などであり、以下の要件を満たす必要があります。

・地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。

不動産売買のみでの引継ぎでは、経営資源の引継ぎ対象となりませんので注意しましょう。

事業承継補助金の支給が決まった企業の事例

事業承継補助金の支給が決まった企業の事例

さまざまなケースの補助対象となる条件をご紹介しましたが、具体的な例がイメージできなければ、理解が難しい部分もあるかもしれません。

今回は具体的にイメージできるように、事業承継補助金の支給が実際に決まった企業の事例をご紹介します。自社のケースと照らし合わせながら考えてみましょう。

地元の食材を使った居酒屋をリニューアルした店舗の事例

岩手県にある居酒屋をリニューアルした事例です。母親が経営していた居酒屋を娘が承継することになりましたが、少子高齢化や景気衰退などの影響で経営状態が芳しくありませんでした。そこで事業承継を機にライブステージを併設し、飲食だけではなく音楽も楽しめるようにお店をリニューアルします。

また地元の食材を多く取り入れた料理を提供するように変更したプランで、事業計画書を提出した結果、無事に事業承継補助金の交付が決まりました。

地域企業との企業のミスマッチ解消を支援する事業の事例

山梨県甲府市でサービス業を営む企業の事例です。元々は山梨県の特産物「もも」「ぶどう」「梨」などの新鮮な果物を県外に届けることで、山梨県が持つ魅力を認識してもらうのが目的で設立された事業でした。

またそれらの果物以外にも、地元大学の専門家から指導を受けた特別な加工技術で作られたキウイを、県内の高級スーパーなどに卸していました。

事業承継後、後継者は新しく「大学と連携した学生と地元企業との企業間のミスマッチ解消を支援する事業」を始めます。この求人支援サービスは、地域に特化しているため、山梨県の雇用を支援する狙いがありました。企業・学生・企業のすべてにメリットが期待できるプランであったため、事業承継補助金の交付を受けられました。

個人客からの直接受注を増やす計画で補助金を受け取った事例

創業60年を迎えた建具工房の事例です。業者からの下請け工事の受注が大部分の売上であったため、利益率の低い経営が大きな課題となっていました。そこで事業承継を機に、利益率を上げる目的で個人客から直接注文を受けるプランを打ち立てます。

またショールームの新設と共に新商品の開発に力を入れ、個人客から直接注文を増やす計画を立てた結果、事業承継補助金の交付が決まりました。

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の交付金額はいくら?

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の交付金額はいくら?

事業承継補助金の交付金額はいくらになるのでしょうか。対象者に交付される補助額は「補助対象経費の2分の1以内」となっています。

経営革新の場合「経営者交代型」は、補助下限額100万円、補助上限額250万円以内、上乗せ額+200万円以内、「M&A型」は、補助下限額100万円、補助上限額500万円以内、上乗せ額+200万円以内です。

専門家活用の場合「買い手支援型」は、補助下限額50万円、補助上限額250万円以内、「売り手支援型」は、補助下限額50万円、補助上限額250万円以内、上乗せ額+200万円以内となっています。

補助金交付のタイミングは、事業完了後の支払いとなります。実費弁済となるので、補助事業は事前に自己調達することが必要です。借入金などで資金を準備する必要がある点に注意しましょう。

事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)を受け取るまでの流れ

事業承継補助金の詳細が理解できたところで、実際に補助金を申込み受け取るまでの流れを把握しておきましょう。

全体像が見えてくると、準備するものや、やらなくてはならないことが明確に見えてきます。申請準備から申請、そして最終的な交付申請までの流れを詳しくご紹介します。

事業承継補助金の申請準備をする

申請するためにはまず、申請に必要な書類を準備しなくてはなりません。提出する書類は「後継者交代型」なのか「M&A型」かで異なります。承継のタイミングによっても異なるため、きちんと確認しましょう。

事業形態により、以下の書類が必要となります。

法人の場合
・履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・直近の確定申告書、直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)

個人事業主の場合
・税務署の受領印が押印された確定申告書B
・所得税青色申告決算書の写し


特定非営利活動法人の場合
・直近の確定申告書
・直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)
・履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

その他の添付書類として必要なものは「補足説明資料」「住民票」「認定経営革新等支援機関による確認書事務局が指定した様式で、認定経営革新等支援機関の印鑑があるもの」「申請資格を有していることを証明する承継者の方の書類」「承継に関する書類」「加点事由に該当する場合の資料」が挙げられます。

補足説明の資料は必須ではありませんが、なるべく多くの書類を用意しておいたほうが審査のアピールポイントが多くなりますので、できるだけ準備しておきましょう。事業計画書の作成が難しければ、専門家に依頼するのがおすすめです。当然のことながら必要書類が欠けていた場合は、審査を受けられませんので注意しましょう。

準備ができたら補助金を申請する

準備ができたら、申請をしましょう。提出方法は原則「電子申請」となっています。必要な書類を提出したら、あとは審査の結果を待ちましょう。

交付が決定したら事業を実施してから交付申請する

審査の結果、補助金の交付が決まったとしても、あくまで「仮確定」の状態です。新規事業が完了したことを報告して、2〜3ヶ月後に補助金を受け取ることができます。

また受給後にも5年間は事業承継補助金事務局へ、事業状況を報告する義務が生じますので、忘れないようにしましょう。

補助金の情報をこまめにチェックしよう

補助金の情報をこまめにチェックしよう

事業承継補助金は2019年からスタートしていますが、年度ごとに申込みの期間が決まっています。常時申し込める訳ではないことに注意してください。また年度によって補助額や、対象など要件が変更されることもあります。情報はこまめにチェックしましょう。

事業を存続するためには、いつか事業承継しなくてはなりません。現在日本では、後継者不足が大きな問題となっているため、それらを解決しようと国がさまざまな支援や補助を行っています。そのときになって慌てることのないように、早めに準備を始めてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

DX支援メディア編集長
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