【最終更新日:2022年1月3日】
営業は数を打つ仕事だと考えられがちですが、「売上倍増!」「契約数前月比50%アップ!」といった理想を掲げるだけでは、効果的な営業活動にはつながりません。やみくもに営業をかけさせるような現場では営業マンが疲弊していってしまうでしょう。
事業の発展には明確な「ビジョン」と、そのビジョンを達成するための「営業戦略」、そして戦略を実現させる具体的な「営業戦術」が必要です。
営業活動の指針となる営業戦略を適切に策定し、事業の拡大へとつなげる5つのステップをご紹介します。
目次
ステップ1「調査・分析」
ものごとを改善したい・発展させたいと考えるときに、まず取り掛からなければならないのが、今現在置かれている状況を調査・分析することです。
「これは良い商品だから〇台売れるはず」「開発にいくらかかったから早期回収したい」など、客観性を欠いた数値や社内事情による戦略が市場のニーズとマッチするのは難しいでしょう。SWOT分析や3C分析などのフレームワークで市場やユーザーと自社の現状を正しく知りましょう。
調査・分析では特に「市場調査」と「自社分析」のふたつの要素が重要です。「市場調査=外部環境」の脅威とビジネスチャンスを洗い出し、「自社分析=内部環境」の強み・弱みから自社製品・サービスの特徴がとらえられれば、課題の発見や目標設定の裏付けとなるデータが得られます。
市場環境を把握する
「市場環境」の調査に必要な要素にはどのようなものがあるでしょうか。
市場動向や今後の市場予測については経済ニュースに敏感でいる必要があります。また、マーケット規模に対するシェア調査などでは「業界地図」が役立つでしょう。そのほか、経済動向・金融情勢・人口動態など、社会情勢の影響も見過ごせません。SNS上で話題になった商品や流行についてもアンテナを向けておきたいものです。
顧客の年代それぞれの動向やニーズを把握しておき、競合他社の製品やサービスについても自社製品との公正な比較検討ができるようにしましょう。
これらのマーケティングについては、営業マンがすでに経験として理解している部分もあるかと思います。しかし、営業の現場ではつい具体的な手法である営業戦術が重視され、営業戦略やビジョンを周知徹底するのが難しいという課題があります。
部署間を横断したマーケティングチームを発足させ、分析結果を誰にでもアクセスできる形でまとめておくと良いでしょう。またデータを共有することで組織全体の意識を統一させやすくなるという効果も得られます。
自社の営業状況を把握する
自社の営業状況を把握するには社内リソースの確認と営業実績の分析が大切です。
社内リソースには営業マンの人数から販促物やイベントにかけられる予算、製造ラインの生産体制・在庫状況など営業に関わる「限りある資源」が全て含まれます。流動的な要素が多いので、常にリアルタイムで確認できるようなシステムが理想的です。営業戦略の数値策定や見直しに役立てるためにも、定期的なチェックができる体制にしておきましょう。
営業実績の分析は営業マン一人ひとりの成果とも直結するデリケートな部分ですが、アポイントにいたるまでの経過やアクションの回数、案件あたりの稼働時間、コストなどの要素ごとに数値化し分析しましょう。この段階で各人にフィードバックすれば営業セクション全体のスキルアップにもつながります。しかし、「1日○件電話すること」「販促費はここまで」といった「戦術重視」に陥らないよう注意が必要です。
ステップ2「営業課題を明確にする」
市場調査と自社分析からは営業課題が透けてみえてきます。さらに課題を明確にするために、営業マン各人からも具体的な事例を聞き取っていきましょう。
営業ツールへの問題提起や会社への不満、価格・サービスの競合状況、社内システムなどの業務の効率化に関する提案など、多種多様な意見が寄せられればヒアリングは成功です。特に、販売・サービス提供の最前線にいる営業マンが日々感じている顧客ニーズの変化や多様化は、市場マーケティングだけでは得られない貴重な情報です。
営業に関する全ての課題がリスト化できれば、重要度の判断も容易になります。また、あらゆる情報を集約することでみえてくるリンクもあります。すぐに解決できることは営業戦略の策定を待たずに取り組んでも良いでしょう。
ステップ3「営業目標を設定する」
営業課題の重要度や自社リソースの分析を参考に具体的な「営業目標」を設定します。目標数値がないまま「現状はわかった、一つひとつ改善していこう」という方針では、いつまでに何をするのかが曖昧になり、事業の拡大スピードが鈍化してしまいます。過去の実績や営業力を把握して、説得力のある売上額や販売数を設定しましょう。
また、営業目標には「売上・利益」「顧客数」「サービスの質」などさまざまなエレメントが考えられますが、ここでの目標は1本に絞ります。営業目標は、最終的には企業のビジョン達成のための道筋として設定されるものなので、ゴールが複数あっては現場の混乱を招いてしまうからです。
シンプルな営業目標はそのまま経営陣から営業マン各人までが意識する「スローガン」となり、社を揚げて目標達成に向けて行動できるようになるでしょう。
ステップ4「営業戦略を策定する」
ステップ1から3までを踏まえて、営業目標を達成するための戦略を策定します。
戦略には基本戦略と個別戦略があり、いずれも「将来どうありたいか」といった企業ビジョンを明確にイメージしつつ、自社の強みをいかし、リソースを集中させて、中長期的な視野で実行していきましょう。
また、営業戦略には「誰が(どのセクションが)」「どのように(営業戦術)」「いつまでに(期限)」行うかを具体的に組み込みましょう。特に「誰が」の部分が曖昧な戦略は責任の所在がはっきりせず、策定案がスタートした後のスピード感や実績評価にも影響してしまいます。
分析データに基づいた目標数値から逆算すれば、より細かな実行計画を立てることができます。実現可能な数値を目指すことは営業マンのモチベーションの維持に役立ち、成功体験を積み重ねることで各人が成長すれば、企業ビジョンの実現により早く近づくことでしょう。
ステップ5「PDCAサイクルを実施する」
では戦略に基づいた営業戦術にまい進すれば、事業拡大は約束されるのでしょうか。
机上論では完璧でも実際の現場では、理論的には間違っていないのになぜか達成できない、全員ががんばっているのに成果につながらない、ということが往々にして起こります。このような問題が起きたときに、営業活動に行き詰まり事業の停滞を招いてしまうことのないように「PDCAサイクル」を取り入れましょう。
「PDCAサイクル」とは
・P=PLAN 計画
・D=DO 実行
・C=CHECK 評価
・A=ACT 改善
を繰り返すということで、「P=計画」は営業戦略、「D=実行」は営業戦術にあたります。
目標数値の達成のためには「C=評価」と「A=改善」が欠かせないのです。正確な評価のために営業の実行状況をつぶさに記録しておき、数量的に分析できるようにしておきましょう。
「C=評価」では営業活動の良い点・悪い点を洗い出し、改善点を探ります。ここで大事なのは、事業が順調なときでも改善点を探ることです。顧客ニーズの細分化している現在は、一時的に順調でもいつ潮流が変わるかわかりません。市場の変化に対応できるよう、常に次の一手を備えましょう。
「A=改善」では小さなことでも実行し、戦術をブラッシュアップしていきます。営業戦略が半期に渡るものだとして、2カ月おき程度には「C=評価」「A=改善」のサイクルを回していきたいものです。
しかし、このとき営業戦略までぶれてしまうと、どこがどう悪くて目標が達成できないのか評価することすら難しくなってしまいます。「誰が(どのセクションが)」「どのように(営業戦術)」「いつまでに(期限)」行うか定めた営業戦略の一貫性は保った上で、改善を図っていくようにしましょう。
今回ご紹介した「営業戦略5つのステップ」をあなたの事業に照らし合わせ、ぜひ今後の営業活動の参考にしてみてください。