【最終更新日:2022年1月3日】
営業マンとして数年、実績をあげていくと「マネージャー」への昇格が待っています。すでに内示を打診されている人も、これから営業マンとしてスキルアップして上を目指したい人も、営業マネージャーの仕事とは何なのか気になるのではないでしょうか。
営業セクションにおけるマネージャーの役割と実務について解説します。
目次
営業マネージャーとは?
英語のマネジメント(management)を辞書で引くと、「経営」「管理」「操縦」などの意味を持つことがわかります。営業マネージャーとは、会社の売上を担う営業マンを束ね、彼らの能力を最大限発揮できるように管理する役職のことです。
営業マンとして順調に実績をあげ、自社の商品・サービスはもちろん顧客についても深く理解し、優れたコミュニケーション力とリーダーシップが発揮できると見込まれた人材が登用されることでしょう。
営業マネージャーの仕事・役割
いち営業マンでいる間は、自身の案件のためだけに動いていれば、売上達成につながり評価されてきました。営業マネージャーは、自身のチームメンバー全員の案件を俯瞰し、パフォーマンスを高めていくように動かなければなりません。
また、マネージャーへの昇格は経営陣側に一段近づいたことも意味します。会社のビジョンや経営方針を理解し、経営陣と社員をつなぐ役割を担っていることを自覚しましょう。
経営マネージャーの具体的な業務について解説します。
営業戦略をたてる
会社の経営方針を実現するために営業戦略をたて、営業活動に落とし込むのが、マネージャーの大切な業務です。会社が販路拡大路線にあるのか、既存顧客の深耕戦略をとるのかなど、中長期的な視点で経営方針を理解し、それにあった営業活動の手法をメンバーと共有します。
マネージャー自身の経験とリーダーシップでメンバーを主導していくか、メンバーにも営業戦略について意見を出してもらい共通意識を持って目標に向かうかは、マネージャーのパーソナリティーによって変わってくるでしょう。
営業メンバーを育成する
経営方針実現のための戦略と、現メンバーのスキルとに乖離があれば、営業メンバーの育成も重要な任務となります。
チームの目標が達成できていても、それが1人のトップセールスマンの尽力によるものならば、健全なチーム運営とはいえません。また、目標達成のためにマネージャー自らが主体的に営業活動を担うという形は、いつまでも続くものではありません。
メンバー一人ひとりについてスキルや営業活動の状況を分析し、アドバイスやコーチングを行ったり、補い合える組み合わせで営業をさせたりすることで、各人の成長を促しましょう。
効果を検証する
営業戦略の実行度合いやメンバーの成長を知るには、PDCAサイクルが適しています。
PDCAサイクルとは、
・PLAN=計画
・DO=実行
・CHECK=検証
・ACTION=改善
の頭文字をとったもので、業績が良いときはもちろん、伸び悩んでいるときにこそ「検証」して「改善」を図ることが大切です。
営業戦略については営業手法を見直したり、そもそも目標数値が実現可能なものだったのかあらゆるデータを検証したりする必要があるでしょう。
メンバーの育成に関しては、
P=メンバーの課題に対してマネージャーとして何を為すべきか計画し、
D=アドバイスやコーチング、実地研修などを実行し、
C=2週間から1カ月後を目安に変化を測定し、
A=足りていないところ、伸びしろのあるところなどを改善していく
というサイクルになります。
課題のあぶり出しにはマネージャーの得意・不得意や先入観に影響されないよう、KPI(重要業績評価指標)を用いることをおすすめします。
良い営業マネージャーになるためのコツ
営業マネージャーとして経営陣と社員の間に立ちながら信頼を得て、一人ひとりと良好な関係を築くには、営業マンであった頃とは異なるスキルが求められることになります。
良い営業マネージャーになるためのコツを5つご紹介します。
自分の立場を理解する
営業マネージャーは営業マンからみれば上司にあたります。常日頃、顧客とのコミュニケーション力を磨いてきた人でも、「部下とのコミュニケーションをとる」のは初めての経験でしょう。マネージャーになって「上司」の顔をしなければいけないこと、今までとは勝手が違うことに戸惑うかもしれません。
「上司」だからといって、完璧であろうと力み過ぎても部下はついてきてくれません。また、同じ階級から一段上がったことで営業マンからネガティブな感情を向けられることもあるでしょう。
マネージャーは営業マンを支配する存在ではなく、一緒に課題をクリアしていくチームの一員だということを理解し、部下にもそうあるように指導していくことが大切です。
部下の意見を聞く
PDCAサイクルを1人で担おうとしても、独善的であってはうまくいかないケースが多くなります。計画や検証の段階で部下の意見を吸い上げ、業務に活かす姿勢をとりましょう。部下の意見を取り入れきれなかった場合にも、理由をきちんと説明し検討したことを伝えれば、「またアイデアを伝えてみよう」という良い循環が生まれます。
きちんと説明する
マネージャーは営業マンへ指示する立場にあります。会社からの指示であれ、マネージャーの考察から導かれた指示であれ、理由を知らないままに行動させては思考停止による指示待ち体質になってしまう恐れがあり、背景に納得できない指示はモチベーションにつながりません。
その指示に至った状況説明と、実行することによって得られるメリットを部下にもきちんと説明しましょう。
部下を平等に扱う
複数の営業マンを率いるときには、皆に「平等」であることを意識しましょう。成績の高低やマネージャーの好悪で目をかける・かけないの差が出ないようにあらゆる場面で注意します。
何気なくみんなに「がんばってるな」と声をかけているつもりでも、「自分だけ言われていない」などと認識されてはチーム運営にも支障をきたすでしょう。
ここで気をつけたいのは「成績が良い」「成績が悪い」に含まれない「普通の営業マン」にも平等に接することです。定期的に1on1ミーティングの機会を設け、一人ひとりの課題や悩みを共有するよう心がけましょう。
問題を放置しない
定期的な1on1ミーティングやPDCAサイクルで課題や問題に気づいたときに、忙しいからといって「様子見」の対応をとってしまっては、改善の機会が失われてしまいます。渦中にある営業マンは「無視されている」と感じるでしょう。
問題を放置せず、自身で扱いかねる問題であれば周囲や上長にいち早く報告・相談をするのが信頼されるマネージャーの姿です。上長への相談は失態とみられるのではないかと考える人がいますが、そうではありません。必要なときには助けを求め、問題が大きくなる前に手を打てる人が真に優秀なビジネスマンだといえるでしょう。
営業マネージャーにおすすめの書籍3選
マネージャーが営業マン各人のスキルと営業活動を正確に把握するにはKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)を取り入れることをおすすめします。KPIとは何かといった基本やチーム作りが学べる書籍を3冊ご紹介します。
最高の結果を出すKPIマネジメント
2兆円を超える売上収益を上げ続けるリクルートグループで、KPI社内講師を務めた著者のマネジメント手法が基本から実践まで丁寧に解説されています。ケース別の事例も掲載されており、営業戦略に合わせた目標数値の設定に役立つでしょう。
営業を仕組み化し、部下のやる気を最大化する、最強のチーム創り ザ・マネジメント
社員50名の中規模企業に出向した営業部長が、「仕事とは何か」「部下がいきいきと働ける環境を作るには何が必要か」と奮闘するビジネス・ストーリーです。
部下やリーダーが成長していく過程とそのビジネス手法の解説が併記されているので、読了後には胸が熱くなるとともにチームビルディングについての理解が深まることでしょう。
2時間でわかる【図解】KPIマネジメント入門 ―――目標達成に直結するKPI実践書
シンプルな図解と実践的な解説で、KPI初心者でもわかりやすいと好評の1冊です。営業部門以外に製造部門や品質管理部門など13部署に及ぶKPIの指標設定例が掲載されているので、相対的に欲しい情報が少ないと感じるかもしれませんが、全社的な視点を持つことは営業マネージャーにとっても必要なスキルでしょう。
まとめ
営業マネージャーに大切なスキルとは、チームビルディングにおけるリーダーシップを発揮することと、PDCAサイクルとKPIを活用して部下の成長を促すことだといえます。
特に、営業マンへの感情的な評価を排して業務を効率的に向上させることのできるKPIは、マネージャーに必須の知識となっています。
新任マネージャーやステップアップを目指す営業マンは、KPI手法を学んでおくことをおすすめします。