【最終更新日:2021年1月9日】
私たちの生活にAI技術が活用されるようになり、日常だけでなく仕事にも変化が及んでいます。
これからどんどんAIが発達していく時代に、営業職はどう変化していくのでしょうか。
目次
なぜAIが営業職の仕事を奪うのか?
オックスフォード大学でAIの研究を行っているマイケル・A・オズボーン准教授は、2014年に自身の論文で「今後10~20年ほどで、米国の総雇用者の約47%の仕事が機械により自動化されるリスクが高い」と衝撃的な発表をしました。
それから約6年経ち、当時よりもAI技術が発達している現在。
セルフレジを導入し、店員がレジ打ちすることなく会計ができるスーパーやコンビニ、AIによる異物混入チェックや検品を導入した工場など、AI技術の発達によって人間が作業をしない時代が到来しています。
営業職にもその波はやってきているのです。
例えば、消費者はほしいものがあればインターネットで情報収集をして取捨選択を行います。また、「ほしい」と思ったらワンクリックで買い物ができるECサイトも乱立しています。
つまり、今までは営業が顧客の元へ行って商品の紹介をしたり使い方をレクチャーしたりしていましたが、今はインターネットで事足りるため、従来の営業の仕方が通用しなくなってきているのです。
営業職は絶滅する?
従来の営業の仕事をAIが代替するようになると、営業職は絶滅してしまうことも考えられます。
しかし、営業の仕事を紐解いてみると全てをAIが取って代わることは難しいでしょう。
すべての営業の仕事がAIに奪われるわけではない
AIが営業の仕事を代替できるようになってきていますが、営業の仕事すべてをAIが代替できるわけではありません。
例えば、単価が高い商材の場合は顧客との信頼関係を築いてから契約に至ることが多いですし、好みや条件に合わせてカスタマイズできる商材ならパターン化されたAIよりも人の頭で考えられたもののほうが効果的です。
また、専門的かつ深い知識や、インターネットに出回ることのない情報などは、AIでは得ることはできません。
そして、営業職で最も必要とされるコミュニケーションやヒアリングといった営業スキルは、AIが代わることはできないでしょう。
つまり、人にしかできないコミュニケーションや企画提案といった仕事は、AIに奪われることはないと考えられています。
ただし、すべての営業職が生き残れるわけでもない
営業の仕事すべてをAIが代替できるわけではありませんが、商材や業種によってはAIがその役割を奪ってしまう可能性もあります。
例えば、顧客に「この商品をもってきて」と言われてその商品を持っていくだけの“御用聞き営業”のような仕事はAIでもできてしまいます。
また、ネット上での売買が主流となることで、ターゲットを絞り込めていない効率の悪いテレアポや飛び込み営業のような仕事もなくなるのではないかと予測されています。
AIは営業の仕事を効率的にしてくれることもありますが、うまく活用して共存し自分の営業力を伸ばしていかなければ、AIに仕事を奪われてしまう営業職も出てきてしまうでしょう。
AI時代を生き抜く営業職の強み
これからAIがどんどん発達していく時代を迎える中で、どのような対策を講じることで営業職として生き残っていけるでしょうか。
AI時代を生き抜くためには、機械ではできない人間ならではの強みを持つことがポイントです。
知識や経験を活かした対応ができる
人間は知識や経験を身に着けていくことで、それを応用していく力を持っています。
AIも機械学習や深層学習といった学習を重ねて成長していきますが、どうしても機械的なパターンからは脱却できません。
一方で人間の場合は、顧客とのやり取りの中から、自分の知識や経験に基づいて顧客のニーズや潜在意識を汲み取って提案していくことができます。
顧客の年齢や居住地などの属性だけでなく、仕事や趣味嗜好などから多角的に分析し、自分の引き出しの中にあるものを応用して提案することができるのは、AIには真似できない人間ならではのやり方でしょう。
細かな要望にも臨機応変に対応できる
AIはルール化されたことに対応することは得意ですが、学習していること以外の対応をすることはできません。
しかし、営業の現場では臨機応変な対応が求められるシーンも少なくありません。
例えば、値引き交渉や細かな納期の調整、決裁者への一押しなど、「ここがクリアできれば契約できる」という場面は営業現場では多くあります。そのようなときに人間ならばすぐに調整して臨機応変に対応することで、受注を獲得することができるでしょう。
顧客の性格や感情にも対応できる
AIはコミュニケーションを取ったり空気を読んだりすることができません。
一方で、営業では顧客の性格やそのときの感情を汲み取って提案することも求められます。
機械的に分析して最適なものを提案するAIとは違い、人間は顧客の性格や感情などからニーズを読み取ったり、そのときの空気感や雰囲気から営業トークを変えたりすることができます。
これはAIにはない人間ならではの強みでしょう。
新しい情報やテクノロジーを駆使できる
日々さまざまな情報が交錯し、テクノロジーは日進月歩を続けており、営業を取り巻く環境は常に変化を遂げています。
次々と登場する新しいシステムに必ずしも既存のAIが連携できるとは限らず、新しいシステムと既存AIを連携させるために、その都度多額の開発資金をかけて対応するのは現実的ではありません。
そのような中で、たくさんのデータやテクノロジーを多角的・複合的に駆使して答えを導き出すことができるのは人間の強みであるといえます。
AIによって営業職が得られるメリット
これからの時代、AIは営業の仕事を奪うのではなく、営業の仕事をもっと効率的にしてくれる存在になると考えられています。
AIは「営業補佐」として重宝する
営業は、商談や顧客とのコミュニケーション以外にも、テレアポリストの作成、日報の作成など、日常的に行なう定型的な作業にも時間を取られてしまいます。
しかし、AIを活用するとこのようなルーチンワークを任せることができ、自分は提案内容のブラッシュアップや既存顧客のフォローなどの営業業務にリソースをかけることができるようになります。
AIとは協力関係を構築できる
AIは、会議や商談のスケジュール調整やその連絡、商談先の情報リサーチ、提案書作成や見積もり作成といった、秘書やアナリティクス役に当たる作業にも長けています。
人間が行うとミスが起こりえる作業でも、AIならば間違いなく確実に処理を行ってくれますので、上手に活用することで協力関係を構築することができるでしょう。
AIができることはAIに任せ、人間にしかできないことは自分の手でやることで、仕事が効率化して成果にもつながっていくはずです。
ただし専門知識も必要になる
商材を購入する際、深い専門知識がなければ他社製品との比較が難しいようなケースにおいて、大体の買い手はその専門知識について1から学んで自分ひとりで検討しようとする人は少ないでしょう。
例えば、AIがその複雑な仕様について難しい数値をずらずらと列挙して説明したとしても、買い手がそこから理解するのはとても困難です。対処として自社製品についてかみ砕いて説明文を掲載したとしても、あまたある他社製品と比較し、そちらにわからない情報が載っていたら、買い手はそこでつまづいてしまいます。
こういった事態を避けるためにはやはり専門知識をもった人間が間に入り、情報を翻訳してわかりやすく伝える必要があります。
まとめ
AIの活用は必須ではありませんが、うまく活用できる人こそが営業の成果を出していけるようになるのではないでしょうか。
AIと共存できるような営業スキルを身に着け、これからの時代を生き抜いていきましょう。